取材・文◎本誌編集部
語り◎赤津孝夫
写真◎足立 聡
キャンプをするときは、ただでさえいろいろなアウトドアギアが必要になります。フィッシングキャンプでは、そのうえ釣り具まで携行しなくてはなりません。道具のそろえ方は、暖をとり、食事をして、寝る。それを屋外で行うための道具を用意すればよいのです。私の経験上、木を切ったり食材をさばいたりするためのナイフ、それから調理をするために焚き火の火を熾す道具、最低限それさえあれば、あとはなんとかなるように思います。
テントだって、そんなに立派なものを持って行く必要はありません。暖かい時期はタープだけ張ってその下で寝てもいいですし、それが案外気持ちよいのです。西部劇なんかで焚き火の横で寝ているシーンがあるでしょう? アメリカでは、結構そういう感じで一夜を過ごす人も多いのです。日本の場合は湿気が多く夜露が降りることがありますが、タープを張っていればそれも防ぐことができます。なかでも優秀なのが、スウェーデンのアウトドアブランド「ヒルバーグ」のタープです。驚くほど軽量なのにとても丈夫で、コンパクトに折り畳めるのでかさばることもありませんので、フィッシングキャンプにもおすすめです。
タープの下で寝るときに使ってみてほしいのは、コットと呼ばれる組み立て式の簡易ベッドです。脚が付いており地面から少し上がるので、設置する場所に石が転がっていたりしても気にする必要はありませんし、硬い地面に直接横たわるわけではないので体に負担もかかりません。さらに暑い時期は、タープの下にモスキートネットをつり下げてコットに寝転び涼しいなかで眠りにつくのは、本当に気持ちがよいものです。
テントとハンモックが融合したような「ヘネシーハンモック」という面白いギアもあります。木と木の間にハンモックを張り、その上にフライシートを重ねることで、雨や日差しをしのぐ構造になっています。モスキートネットでハンモックを覆うので、蚊などの虫も気になりません。宙に浮いているので地面が傾斜地だろうが、岩場や水溜りがあろうが関係ありません。普通のテントよりも軽量なので、持ち運びも楽です。僕自身、カヤックで川下りをするときはいつも「ヘネシーハンモック」を使っていますし、渓流釣りでは、かなり役に立つはずです。
寒さを感じる時期に備えて、寝袋はいいものを一つ持っておいた方がよいですね。コンパクトで暖かいのは、やはりダウンの寝袋です。化繊を充填したものもありますが、僕はあまり使い分けることはしません。ダウンの寝袋って、想像以上に長持ちするのですよ。僕が一番長く愛用しているもので、45年くらい使っています。防水透湿性に優れたゴアテックスのシュラフカバーもあると便利で、結露や雨を防げるので寝袋の中を快適に保てます。
寝袋の他にもうひとつ用意しておくと快適なのが、トラベルシーツです。オーストラリアのメーカーが開発した「コクーン」は、薄手の寝袋のような形状をしています。暖かい時期はそのまま中に入って寝てもいいですし、飛行機などで移動する際に羽織るといった使い方もできます。保温性に優れ寝袋に重ねて体を包めば、中の温度が5℃ほど上がるので温度調節をするのにも最適です。透湿性が高いので、蒸れることもありません。素材はいくつか種類がありますが、特にシルク素材は肌触りがよいうえ保温性も高く快適です。寝袋にゴアテックスのシュラフカバーと「コクーン」を組み合わせれば、どんな場所でも心地よく寝られることでしょう。
どんなキャンプでも、火を確保することが最重要です。火をおこせば暖かくなるし明るくなり、それだけでずいぶん安心感が高まります。日本では、たいていどんなところでも枯れ枝など燃えるものが落ちていますから、焚き火をするのに困ることもありません。慣れてくると燃料を現地で調達して、手早く火をおこせるようになるでしょう。
効率よく火をおこしたいなら、「サバイバルストーブ」というギアも使ってみてください。電池で小型のモーターを回して多量の空気を送り込むことで、高い火力で燃料を燃やせる仕組みになっています。薪や木炭だけでなく生木でも、燃えるものならなんでも燃料になります。
最近は火おこしの方法自体に凝っています。河原などでキャンプをするときは、炭素鋼でできた火打金を持っていくのです。そして、河原に落ちている石に打ちつけて火花を散らして火をつける。石はチャートや石英、黒曜石などいろいろありますが、もともと岩石に興味があったので、それを使って火おこしができるとなると、もっと面白くなってきました。
火打金で飛ばした火花を着火させるには、火口になる燃えやすい素材を用意しておかなくてはなりません。よく使われるのは麻ひもをほぐしたもので、植物繊維なのでよく燃えます。それを油をたっぷり含んだ白樺の皮に燃え移らせると、すぐに火を大きくすることができます。タオルなどコットンの布を加熱して炭化させて作る「チャークロス」という燃料を自作しておけば、火花をしっかりキャッチしてじわじわ燃える理想的な火口になります。ライターや着火剤を使えばもっと簡単に火をおこすことはできます。しかし、せっかく非日常を味わえるキャンプなのですから、あえて火を生み出す過程を楽しんでみるのもいいのではないでしょうか。
釣り具と同様にアウトドアギアもよい物を見極めたり、長く使い込んだりする楽しみがあります。まだ経験したことがない人は、ぜひ一度、フィッシングキャンプに挑戦して、アウトドアギアの奥深さを知ってほしいと思います。