2018
10.12
Vol.60 ② GT(ガーラ)を目指してカヤックを漕ぐ、石垣島ビーチキャンプ
特集・八重山諸島の釣りと文化「海上遊歩で出会う多彩な魚類たち」より

カヤックフィッシングの聖地・石垣島

取材・文◎フィッシングカフェ編集部 写真◎能丸健太郎

「今出れば、潮止まり前の喰いが期待できます。これからグンと潮が引いてきて、今日のドン引きは11時頃。満潮は17時頃です」と、ガイドの赤木宏介さんは、波打ち際へ運んだカヤックの横で、パドルを握る左腕の時計を見ながら、潮汐のタイミングを教えてくれる。
 サンゴ礁に囲まれた石垣島では、リーフの内と外にGT(ロウニンアジ)やオニヒラアジをはじめ、根魚のハタ類やフエフキダイなど、さまざまな釣りの好敵魚が集まっている。そのリーフフィッシングで最も有効な手段は、安定性の高いシットオン・タイプのカヤックからの釣りだ。なかでもリーフ際を回遊するGTを目標にし、石垣島北東部沿岸の伊野田キャンプ場を拠点にカヤックフィッシングに挑んだ。

伊野田キャンプ場前のビーチから、北東に2~3キロ漕いだ沖に浮かぶ、珊瑚の塊りが隆起した岩礁。この岩礁を中心にまずは根魚を狙った。

「今日の風は北寄りなので、斜め左の沖へ進んでください。最初は少し向かい風ですが、北側のリーフエッジの周辺で上り下りしながら釣った方が、後が楽なので」と、赤木さんの指示通りカヤックを北東に向け、前方に浮かぶ岩礁を目印にパドリングを繰り返す。
 新石垣空港から国道390号線を北上した海岸沿いにある、伊野田キャンプ場前のビーチからシーカヤックを漕ぎ出したのは、午前10時を過ぎていた。
 亜熱帯海洋性気候に属する石垣島の面積は、約223㎢。島の中央のやや北側には、沖縄県最高峰の於茂登岳おもとだけ(標高 525.5m)があり、北東部に細長く平久保半島が突き出している。その平久保半島の付け根に広がるリーフエッジ周辺がポイントだ。

現地で「アカジン」と呼ばれるスジアラも、この日はかなり釣れた。他に5時間ほどで、ベラ類やダツなど8目13匹の釣果。何が釣れるのかわからないのも、石垣島リーフフィッシングの魅力だ。

「この広いリーフの中には、ガーラ(ロウニンアジ)も入ってきます。カヤックからトップウォーターで、20kgのガーラを釣ったこともあります。他に根魚で大きいのはアカジン(スジアラ)。4~5kgぐらいまでは釣ったことがあります。
 ツアーでは、リーフエッジの内側で釣ることが多いですね。カヤックを使って歩きながら釣っている感じになります。いわゆる“パドル・ウォーク・フィッシング”です。
 参加者の中には、カヤックも釣りも初めてという人もいます。そうした方には、カヤックに乗る前にすべてレクチャーし、キャスティングの練習もしてから漕ぎ出します。ルアーを投げる一連の動作さえ覚えれば、魚も多いので何となく釣りを覚えますし、リーフエッジ内は波も穏やかで怖いこともなく安心です」
 石垣島でカヤックを使ったルアーゲームの醍醐味を提唱している赤木さんがツアーで使うカヤックは、オーシャンカヤックと呼ばれる、ボード状に設計されたシットオン・タイプ(舟の上に座る)のポリエチレン製のカヤックだ。
 海上での乗り降りが容易で安定性もすこぶる高く、初めてパドルを握った人でも、わずかな時間で水面を滑るように進むことができる。また、このカヤック本体の座席後部には、左右に二つのロッドホルダーが設置されており、ロッドを気づかうことなくパドリングにも専念できる。

カヤックをまるで自分の下半身のように安定させ、大きなペンシルベイトを思いきりよく投げる。「何度か経験すれば、誰でもできるようになります」と赤木さん。

 赤木さんのロッドホルダーには、GTのトップウォーター用に大きなペンシルベイトルアーと多彩な魚種を狙うためのバイブレーション系のルアーがセットされ、まるで武士の脇差しのように、大小2本のロッドが差し込まれている。
 ビーチから20分ほど漕ぐと、それまで白砂だった海底に小さな珊瑚の群落が目立つようになる。さらにリーフエッジに近づくと、珊瑚の群落は発達し、面状に浅く広がるように隆起している。その変化に気づいた赤木さんは「この辺りから始めましょう!」と、参加者に声をかける。
 そして、座席後部の袋状のシーアンカーを手に取り、ゆっくりと海に沈ませる。シーアンカーが広がりカヤックが安定すると、慣れた手つきで大きめのペンシルベイトが結ばれたロッドをホルダーから取り出し、ドラグを確認して間髪入れずにキャストする。
 この日の参加者は、ダブル艇の2艇を合わせて合計5名。リーフエッジを超えて、外海からリーフの際を狙うカヤック経験の豊富な釣り人。あるいはうねりのない安全な場所から、陸地側に深く切れ込んでいるリーフの切れ目にルアーを沈ませる初心者。次々とまではいかないが、現地でミーバイと呼ばれるヤイトハタ、アカジンと呼ばれるスジアラ、そして、釣り上げると口が引っ張られホースのように伸びる得体のしれない生物のような、現地でクサビと呼ばれるギチベラなど、石垣島のバリアリーフの生物多様性を物語るように、本州では見たこともない魚が釣れるのだ。

現地で「クサビ」と呼ばれるギチベラ。下顎が外れ、唇が驚くほど伸びて小魚たちをパクっと食べる変わった魚だ。他にパワフルな引きが魅力的な現地で「クチナジ」と呼ばれるイソフエフキ、全長が60㎝から大型で80㎝程に成長するバラハタの幼魚など盛りだくさん。

 この日は、大型のGTこそ出なかったが、潮止まり寸前に赤木さんがリーフの内側で1メートル近い大型のキツネフエフキを釣り上げたのをはじめ、釣り人全員が満足した表情でキャンプ場へと引き上げた。
 ビーチに面した伊野田キャンプ場は、テントが自由に張れるスペースと車やキャンピングカーを横付けしてオートキャンプが楽しめるスペースがある。特にオートキャンプ場の施設は、区画ごとに電気と水道が使えることから人気が高く、他にも温水シャワーや共同炊事場、ランドリーなどの施設も充実している快適なキャンプ場だ。
「石垣島でカヤックから狙うメインの魚は、ガーラです。ロウニンアジとカスミアジとオニヒラアジの3種類の魚をこの辺りでは、ガーラと呼びます。そのなかで一番狙いやすい魚がオニヒラアジです。オニヒラアジは浅場やマングローブにもいるので、うちではガーラの中で一番多く釣り上がっている魚です。

伊野田キャンプ場で夕食をすませた後は、ビーチからの打ち込み釣り。夜になると沿岸に寄ってくる大型魚のタマン(ハマフエフキ)を狙う。明るい月夜はタマン釣りには向いていないが、ビーチで過ごす豊かな時間は、南の島ならではの素晴らしいひと時だ。

 今日は、大きいのが出ませんでしたが、10キロ以下の小型でも、掛かると30秒ぐらい走ります。そして一度止まって、また走っての繰り返しです。そのため最初は、できるだけリールのドラグを緩めに設定します。地形にもよりますが、ある程度疲れさせてからでないと寄せられないからです。
 僕がペンシルかポッパーといったトップウォーター用のルアーを使うのは、沈めると違う魚が掛かってしまうからです。沈めても釣れるのですが、逆にトップに狙いを絞った方が釣りやすいと思います。
 ガーラの最初のドカン! としたファイトシーンが見られることも醍醐味ですし、一度でも自分で掛けてしまったら、釣り人なら必ずやみつきになります」

1m近いキツネフエフキ(頁トップの水中写真)をバイブレーション系のルアーで掛けた赤木さん。『ワールドシャウラ』が根元から曲げられるほどの強烈なファイト。リールは『ステラ』の4000番にPE2号、リーダーはナイロン24ポンドのライトタックル。カヤックがドラグの役割を果たし、ライトタックルでも安心してやり取りを楽しめる。

 ほかにも西表島ほどではないが、石垣島にはマングローブの川もあり、カヤックは貴重なサンゴ礁を傷つけないため、世界有数のサンゴ礁が広がる白保海岸でも釣りができるという。
「石垣島では、カヤックは釣り道具のひとつです」と、赤木さんは言う。石垣島沿岸の釣りのバリエーションや魚種の多様さを手軽に味わうには、カヤックが最も適している。カヤックを使うことで、石垣島の釣りの無限の広がりを感じることも可能ではないか。

赤木宏介(あかぎこうすけ)

1976年埼玉県生まれ。西表島や石垣島の自然に魅せられ自然ガイドを志し、22年前に西表島に移住。その後、西表島、石垣島でカヤックガイドとして活動。また、石垣島のボルダリングの岩場は、赤木氏がほぼすべて開拓。現在はカヤックフィッシングのガイドとして『RED HEAD』を主宰し、石垣島のリーフフィッシングの伝道者として活躍している。
http://redhead-ishigaki.com/

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