2018
11.23
Vol.60 ⑤
パシフィックターポン、マングローブジャック……! 東洋のガラパゴスを疑似餌で釣る
特集・八重山諸島の釣りと文化「西表島・マングローブ・フィッシング開拓物語」より

密林の奥から疑似餌を狙う獰猛なファイター

取材・文◎フィッシングカフェ編集部 写真◎能丸健太郎

「通常、川は上流から流れていますが、西表島の場合、浸透圧の関係で潮が満ちているときには河口から上流に流れができ、魚は下流に向いています。また、満潮時はマングローブの奥の方まで水が満たされているので、ベイトである小魚を浅い方へ追い込む習性があります。深いところで追いかけまわしても、なかなか獲物は捕食できないからです。ですから満潮時は、なかなか釣れません。しかし、逆に水が引いてきたらベイトの小魚も居場所がなくなるので、徐々に本流に出てきます。そこが狙い目です。マングローブリバーの釣りは、潮汐を意識するとかなり面白くなります」と、フィッシング・ガイドの宮城和雄さんは言う。

マングローブの奥で5cmくらいの小さなポッパーに、いきなり巨大なGTがガバッと出てきたこともある。結果的にカヌーがドラグになって取り込めたのだが、海で生活する魚も、満ち潮に乗って小魚を食べに上がって来るという。「マングローブの川では、何が起きるかわかりません」と、宮城さん。

 宮城さんがマングローブ・フィッシングの面白さを見いだした90年代初頭、先鋭的なルアーアングラーは、石垣島を拠点にジャイアント・トレバリー(ロウニンアジ)を狙うGTフィッシングを始めていた。しかし、釣りを通して西表島を見た場合、深い山がありマングローブに覆われた何本もの川がある。周囲の近海でのゲームも面白いが、「その川で釣りのメソッドを確立できたら楽しいのではないか」と思いついたという。
 そこでカナディアンカヌーにフロートを付けて安定させ、立ち上がってキャスティングができるように改造したのが始まりだった。しかし当時は、マングローブの川で何がどう釣れるか皆目見当がつかず、ルアーの選択さえままならなかったそうだ。そこでバス釣りで使うハードプラグやポッパー、ペンシルベイトやミノー、スイッシャーなどさまざまなルアーを試してみると、「わざわざマングローブ用のルアーを使わなくても、手持ちのバス用のルアーやタックルが、そのままドンピシャで使えたんです」と宮城さんは言う。それがきっかけとなり、ますますマングローブ・フィッシングに対する探求心とモチベーションが高まったそうだ。

潮が満ちマングローブ林を出た岩場で宮城さんが釣った、40㎝弱のマングローブジャック。ポッパーを投げた2投目でやる気満々で飛びついてきた。

 マングローブ・フィッシング初日は、舟浮湾の奥に広がるマングローブをガイドしてもらった。釣果は、バラクーダの幼魚やギンガメアアジの幼魚であるメッキ、そしてナンヨウチヌやマングローブジャックなど。どの魚もトップウォーターでバイトし、強烈なファイトをみせてくれた。濃密なマングローブ林とそこに生息する多様な魚類たちとのやり取りには、まさに西表島のルアーフィッシングの醍醐味が凝縮していた。
「私自身、マングローブ・フィッシングで20kgを超えるGTや60㎝を超えるマングローブジャックを釣ったこともあります。一昨年の春にはゲストの方が、幻と言われるパプアンバス(ウラウチフエダイ)の50㎝を釣り上げました」
 パプアンバスは、パプアニューギニアなど西太平洋の限られた地域だけに生息することで知られており、大物狙いの世界中のルアーアングラーたちが一度は釣りたい魚のひとつだ。1992年に西表島の浦内川でも生息していることが確認されて以来、2例目だという。
「西表島のマングローブ・フィッシングは、まだまだ何がいるのかわからない。最近は、テッポウオもターゲットになりました。その魅力も未知数だということです」と宮城さんは言う。

河口域の岩場から出たバラクーダ(オニカマス)の幼魚。トップウォーターのポッパーに躍り掛かるようにバイトしてきた。同じ魚でも、その日によってさまざまなルアーに喰いついてくるのがマングローブ・フィッシングの魅力でもある。「自分の技量を試すにも最高の場所」と宮城さん

 翌日、宮城さんに師事した後、フィッシング・ガイドとして独立した永井洋一さんにフライフィッシングをガイドしてもらった。エレキモーターを取り付けたフロート付きの3人乗りカナディアンカヌーで、白浜の港から仲良川をゆっくりと遡上する。
「マングローブ・フィッシングはルアーでも面白いのですが、フライフィッシングは一味違った面白さがあります」と、永井さんは言う。
 永井さんは、もともとGTを釣りたくて西表島に移住したそうだ。現在はボートを使った西表島近海でのさまざまな釣り、カヌーを使ったマングローブ・フィッシング、そして源流までガイドする。
「海の場合はボートを使い、マングローブの場合はカナディアンカヌーで川を遡上しながらの釣りとなります。マングローブリバーは干満によって次々にポイントが変わるという面白さがありますが、さらにフライとルアーではポイントもアプローチも全然違います。
 最近はカヌーからのキャスティング以外に、ウェーディングしてのキャスティングを希望する方も増えました。腰くらいまでウェーディングしてピンポイントで狙うのですが、それがまた面白いんです」と永井さん。

フライフィッシングの場合、カヌーの上からあるいは、カヌーを下りてウェーディングし、キャスティングを行った。明るいところにフライを入れても反応は鈍く、極力鋭角なタイトループを作り、日陰となるマングローブの奥へフライをキャストする。フライキャスティングの腕試しにもってこいだ。

 ポイントに到着し、早速、永井さんが用意してくれたエビを模したシンキングタイプのフライをキャストする。タックルは6番ロッドにソルト用のフローティングライン7番。できるだけタイトループを作り、どれだけマングローブの奥へフライを入れられるかで釣果が決まる。
 この日は、小型だがマングローブジャック、ナンヨウチヌ、メッキなどが果敢にフライに食らいついてきた。そして圧巻は、パシフィックターポンの群れとの出会いだった。永井さんの指示に従ってフライをキャストすると、ガツンとした手応えと同時に跳躍力のあるジャンプ。エラ洗いのジャンプは2度、3度続き、釣り上げてみれば40㎝ほどだが、淡水のトラウト系とは明らかにパワーが異なる。
「このポイントでは80cmほどのものが釣れています。群れによってサイズが違うのですが、今日の群れは40cmくらいでしたね」と、永井さんはさりげなく言うが、十分に楽しめるサイズだ。

マングローブの奥で釣った40㎝弱のパシフィックターポン。群れで行動するため、たて続けに4回アタックしてきて2回フッキング。銀鱗に包まれた魚体が高く跳ね上がるジャンプもなかなかのもの。1m近い個体もいるという。

西表島には、ミナミクロダイとナンヨウチヌの2種類のクロダイがおり、それぞれ習性が違うという。ナンヨウチヌはマングローブにつきやすく、ミナミクロダイは河口域の砂地でテーリングして、エビやカニを食う。写真はフライをくわえ込んだナンヨウチヌ。

 西表島のマングローブ・フィッシングでは、ルアーでもフライでも自分の腕試しが楽しめる。しかも、魚との距離が近いためフライを追ってくる姿も見える。その駆け引きも面白い。
「海から魚が入ってくれば、必ず反応してくれます。今日は沈ませましたが、普段はトップでも反応がいいです。ブラインドでオープンウォーターに投げる釣りもありますが、マングローブの幹の間や岩の周りなどポイントを絞った釣りの方が、ゲーム性があって楽しいと思います。GTなどに比べれば、決して魚は大きくないのですが、マングローブならではの魚たちをフライやルアーで攻略する醍醐味は、西表島ならではの釣りだと思います」と、永井さんは言う。

宮城和雄(みやぎ かずお)

1949年福岡県生まれ。『マリンボックス』代表。西表島でのリーフ・ボトムフィッシングをはじめ、GTジギング、マングローブリバーでのルアーフィッシングの可能性をテーマに、さまざまな魚種のメソッドを開拓。また、自然を守りながら釣りを楽しむエコツーリズムの推進も行っている。リーフやマングローブではキャッチ&リリースを奨励し、安全なスポーツフィッシング、資源の保護等もゲストと一緒に考えながら釣りを楽しんでいる。
http://www.marinebox.net/

永井洋一(ながいよういち)

1973年東京都生まれ。1995年に西表島に移住。1999年よりフィッシングガイドサービス『ONE OCEAN』を設立。西表島の海とマングローブの川、そして源流域の渓流など、さまざまな釣りの可能性を追究している。
http://www.oneocean.jp/

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