現在の天塩川は全長256kmのうち、河口から約160km上流まで堰堤や人工的な構造物がないため、サケやサクラマスが大挙して産卵遡上する日本有数の大河です。
このサケやサクラマスを求め、多くの魚類、哺乳類、鳥類たちが集まり重なり、流域の貴重な生物多様性が保たれています。
さらに100年ほど前は、この流域の生物多様性の大きな存在として、ミカドチョウザメが生息していました。
チョウザメは環境に敏感な魚類です。天塩川にチョウザメが復活するということは、天塩川が古来より持っている生命力を、取り戻すことにほかなりません。その瞬間私たちは、「この大河は生き返った!」と実感するのだと思います。
かつて天塩川に生息したチョウザメの復活を夢見る「美深チョウザメ館」館長、鈴木渉太さん(後編)のお話をダイジェストムービーでご紹介します。
天塩川中流域の美深町(びふかちょう)には明治中期頃まで、チョウザメが産卵のため遡上していました。
しかし、森林伐採による土砂流出、パルプ工場の建設や廃液による水質汚染のため絶滅。
その後、昭和58 (1983)年、水産庁養殖研究所の飼育実験として、美深森林公園内の天塩川・三日月湖に300匹のチョウザメの稚魚が放流されました。
現在、美深町で飼育されているチョウザメは4000匹に達し、チョウザメとキャビアによる町おこしが成功しています。
「将来的には天塩川での自然繁殖を目指したい」と語るチョウザメ事業の責任者、鈴木渉太さんにお話をうかがいました。
鈴木渉太(すずき しょうた)
1986年北海道陸別町生まれ。
東海大学海洋生物科学科卒業後、都市ガス会社へ就職するが釣り好きが高じ水産関係の仕事を求め、チョウザメ養殖を行う美深町の地域おこし協力隊を務めた後、美深振興公社に就職。現在、チョウザメ養殖管理のスペシャリストとして活躍。
「美深町チョウザメ館」
https://www.bifuka-kankou.com/attractions/tyozamekan/
映像制作◎田畑貴章
写真◎足立聡