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取材・文◎遠藤 昇
写真◎狩野イサム

毎年、旧暦の10月10日(11月末)の夜、出雲大社の西の稲佐の浜で執り行われる「神迎神事」。日本全国の八百万の神が一堂に会するという、「神在祭」のはじまりだ。その頃から日御碕沖で釣れだす寒ブリは、脂がのり丸々と太った魚体で、まさに神のつかいと形容したくなるほどの貫録がある。

ブリは、スズキ目アジ科ブリ属に分類される。魚体は美しい紡錘形で背は青色、腹は銀白色、目から尾にかけて黄色い帯がある。体長は最大で1メートルを超え、背ビレと胸ビレの付け根は窪んでいるが、これは高速で泳ぐときにヒレを密着させてしまうためだ。ちなみに全速だと時速40キロにもなるといわれ、まさに弾丸のような泳力がある。ブリの回遊海域は、日本海、太平洋、東シナ海の3グループに分けられる。日御碕沖にやってくる寒ブリは、日本海グループに入る。そこで、この大社の海にやってくる大型魚の生態を、各地の水産試験場の貴重な研究データをもとに検証してみた。

日本海へ入り北上したブリは、7月には津軽海峡周辺に達し、一部は津軽海峡を通って太平洋側へ達したり、北海道西部海域まで北上するなど、夏から秋にかけては北海道周辺ですごす。その後、11月に入り水温が下がると南下を始め、12月から1月には九州北部海域へ達する。3月頃まで対馬周辺ですごしたブリは、4月から5月にかけて九州西方の東シナ海へと移動し、暖かい海域で産卵活動を行う。その後は、再び日本海へ戻り北上を開始する。ブリは大型化することで回遊能力が高くなり、回遊エリアが広くなることで、さらに大型化する魚と推測される。

ブリの成魚の捕食活動は活発だ。カタクチイワシやサンマ、アジ類、サバ類などの表層性魚類やスルメイカなど海生軟体動物を追いかけ捕食する。大社の海に漂う巨大なベニイカ(ソデイカ)も、20キロ近くに成長したブリなら捕食対象となるかもしれない。

大社の海にやってくる寒ブリは、日本各地を回遊し、さまざまな生命を自分のなかに取り込み、八百万の神々を乗せて11月末に出雲大社で行われる、「神在祭」にやってくるのではないか。まさに、“神ブリ”と呼ぶにふさわしい魚である。