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イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)として日本の音楽シーンを塗りかえた高橋幸宏さんは、40年前、音楽的才能が開花すると同時期にイシダイ釣りに傾倒。音楽家として第一線で活動するさなか、フライフィッシングに開眼する。

幸宏さんは、「自分にとって音楽と釣りの関係は、習得を目指し、あるいは完璧を志す上で、多くの共通点がある」と語る。その具体的なコメントとして、今回の取材のなかから抜粋してみたい。

「イシダイはそうそう釣れるものでもないから、練習ができない。現場に行って、格闘する以外に経験値を上げる方法がない。そうやって経験を一つひとつ積み重ねていくことで上達していく。自分の技術が上がってくると、釣りの面白さもまた一段階変わってくるから、ますます深みにはまっていくのだと思います。

YMOブームが巻き起こった80年代初頭は、うっかり外出もできない状態でした。いつも誰かの視線にさらされているようで、気が休まる暇がなかった。一方、イシダイ釣りはごく限られたマニアの世界ですからね。馴染みの船頭さんは、YMOなんて知りませんからね。普通のお客さんの一人として、当たり前に接してくれる。『高橋さんは東京で音楽の仕事やってるんだって? あぁそう。どこのキャバレーに出てんの?』みたいな乗りでね。それが心地よかった。釣りをしている時間だけは、周囲の目を気にせず、素の自分に戻れる数少ない機会でした」

 釣りはこうでなければならない、みたいなこだわりは特にない。“釣り”と名のつくものであれば全て好きだ。基本的にどんな釣りでも楽しめ、竿さえ振っていれば気分がスッキリするという。

電子音楽の先端を走る多くの作品。そのなかに見え隠れする牧歌的なエッセンスは、時には洋上に浮かぶ雲や渓流が発する、光の粒のような印象を受ける。しかし、その先鋭的な音楽活動の側には、常に「釣り」があった。

今号の巻頭インタビューでは「釣りと音楽、釣りと人生」をテーマに、高橋幸宏さんの知られざる側面についてうかがっている。