数百年の歴史を持つ“日光テンカラ釣り”の流れを汲む、瀬畑雄三さん。竿の2倍近くもあるテーパーラインを自在に操り、日本各地の源流、そしてフライフィッシングの聖地モンタナでもその奥義を披露する。常識を覆すことになった、瀬畑さん独自の「遅合わせ」という概念は、それまでのテンカラ釣りに大きな変革をもたらした。その瀬畑さんを取材して印象に残ったのは、源流釣りへの想いとそこから導き出された釣りの心得だ。
「山奥の源流に入る。日が暮れて周囲が暗くなる。焚き火の炎を見ているうちにウトウトして眠ってしまう。翌朝は目覚めるのが早い。夜が明ける前に起きだして、焚き火をしながら、次第に朝の表情になっていくのを見る。あの感じがなんともいえず好きですね。自分が山の一部になるような気がするテンカラはシンプルだから、より深く自然の中に入っていくには向いている釣りです。しかし、釣るという行為だけでは、テンカラ釣りの本当の面白さはわからない。自然と一体になる、自然に接することで知る驚きや喜びなどが加味されて、さらに釣りが面白くなるんです。そういう釣りを極めようと思って、今日まで続けてきました」と瀬畑さんは言う。
そして、釣りで一番大切なことは「魚がいる所でやる」ということ。魚がいれば、魚は釣れる。釣れない釣りは勉強にならない。魚が釣れることで、腕を上げていく。釣りを必要以上に難しく考えないことが大切だという。そして最後に「魚を釣る方法は魚が教えてくれる。自然への対応方法は自然が教えてくれる。それは私がテンカラ釣りから得た教訓です」。