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21世紀のオーデュボン、ジェームズ・プロセック (本誌P.5〜)  文◎フィッシングカフェ
編集部

19歳で水彩画70作品を収めた『TROUT』で衝撃的なデビューを果たし、21世紀のオーデュボンと称されるジェームズ・プロセック。ひとりの釣り人として、魚や自然界を見つめるまなざしは、単なる画家としてではなく、さまざまな分野に影響力を及ぼしている。

その類まれな才能と実効力は、水彩画の表現を通じて、欧州、アジアと北アフリカなどマス類の多様性を文書として発表するほどだ。

また、世界のネイティブトラウトを求めた広範囲な釣りと調査からトラウトの分類学においては、かなりの見識を持っている。その彼の取材のなかで、特に驚いたのは、アイザック・ウォルトン『釣魚大全』に対する彼の解釈だ。

ジェームズはイェール大学3年生のときに、『釣魚大全』(The Compleat Angler)をテーマにした論文を書いた。それがきっかけとなり、28歳のときに、『釣魚大全』の著者、アイザック・ウォルトンの足跡を訪ね、イギリスやアイルランドを釣り歩く、ESPNチャンネルのドキュメンタリー番組を制作した。

そこで彼はさらに進んだ解釈を得た。
『釣魚大全』が書かれた1653年という時代は、イギリスではシビル・ウォーとも言える、清教徒革命が始まっていた時代。ウォルトンは英国国協会のキリスト教信者だったが、ピューリタンの勢いは強く、英国国協会の信者はかなり迫害されていた。



そんな時代背景のなかで著された『釣魚大全』は、そのタイトルにも関わらず、必ずしも釣りの専門書ではなく、むしろ釣りの本の体裁を借りながら、英国国教会を支持するための暗喩やコードがふんだんに含まれている本だと、ジェームズは言う。

「おそらくアイザック・ウォルトンがもっとも言いたかったことは、英国国教会の人間がその厳しい状況の中で、どう立ち振る舞うべきかという指針のようなものだった。釣りという趣味の世界を書いたように装いながら、実際には宗教について語っている」とジェームズは言うのだ。

『釣魚大全』は日本でも大正時代からさまざまな文学者や研究者が翻訳を試みている。そして、訳者は当時の時代背景を交えた考察をあとがきに記している。しかし、それらと比較して、ジェームズの見解はもっともシンプルなものだ。そして彼はこう言う。

「清教徒革命の時代、釣り人はトラウトを釣るために、ハンターはカワウソを狩るために、ロンドンという大都市を離れていった。しかし彼らは、フィッシングやハンティングに没頭するために、川や野山へ行ったのではない。彼らは守るべき信仰のためにロンドンを捨てたのだ」と。