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闇夜の無人島、「タマン釣り」の醍醐味 (本誌P.39〜42)  文◎フィッシングカフェ
編集部

この日は食いがすこぶる悪かった。普段ならクチナジ(イソフエフキ)やムルー(マトフエフキやタテシマフエフキ)、アカジン(スジアラ)など、主に根魚がたくさん掛かるという。しかし、地元沖縄タマン釣り名手たちのおかげで、じゅうぶんタマン釣りの「静と動」の世界を堪能できた。写真は23時過ぎにリーダーの剛さんが釣ったタマン。


新月の大潮、夜を徹して狙う大型磯魚タマン(ハマフエフキ)は、磯から釣れる2〜3キロ以上の好魚として、沖縄県全域で釣られる人気魚種だ。なかでも、大小さまざまな環礁に守られた無人島のタマン釣りは、地元の人にとって、特別な釣りとなる。キャンプ道具や水・食料を運び込み、島に生息するヤドカリなどを餌に満潮前後を時合に仕掛けを打ち込む、サバイバル的要素の強い釣りは、いやがおうにも男の冒険心を誘う。

しかも、南の島々の釣りで重要な、「ひとり黙々と、パチンコ台をにらむような釣りはしない」。そして、「釣れずとも急いだり、あせってはいけない」。この二つの条件を満たすために、闇夜のナガンヌ島へ渡った。

那覇の巨大な一文字堤防を左手に見ながら、航海時間30分ほどで、釣り場となるチービシ環礁、ナガンヌ島に到着した。チービシ環礁は、サンゴの隆起によってできた神山島、 ナガンヌ島、クエフ島という3つの島から成り立つ。環礁というだけあり、沖のサンゴのリーフから浜までは、200メートル以上もある。黒潮が最初にぶつかるチービシ近海の海は、那覇・一文字堤防や糸満周辺と同じく、冬でもタマンが釣れるポイントだ。また、島周辺は沖釣りのポイントとして有名。歩けば20分ほどで周れてしまう小さな島だが、魚影も濃く、大型魚も多い。今回の釣り人は4名、うち1名は手投げ仕掛け4セットという布陣だ。

夕暮れの釣り場。テントやタープを張り、夜露をしのぎながら釣る。明かりに敏感なため、極力照明はつけない。闇夜に静かに語らいながら釣る、そんな愉しみもある。

大きいもので体長80センチ、重さは8キロにもなるタマン。その食性はウニやカニ、エビ、イカなどかなり雑食だ。特にイカやタコは好物とされる。そのため、リーフに囲まれたサンゴ礁池がタマンのエサ場となる。沖縄のタマン釣りのシーズンは4月から10月くらいまで。浮き釣りか、投げ釣りで行う。

タマン釣りの面白さは、投げ込んで、ゆっくり待つ。そのゆったりしたスタイルにある。しかも、夜釣りが中心。夏ならビールでも一杯やりながら、仲間と会話して楽しむものだという。また、沖縄でタマン釣りに人気が集まった背景には、ロッドやリールなど道具の進化によるところが多い。特にロッドは、竹竿、グラスファイバー、そしてカーボンと進む中で、大型で引きの強いタマンとのやり取りが、かなり向上した。アベレージで2〜3キロ、大きいもので5キロ以上の魚を陸から釣り上げる醍醐味は、そうそうない。

23時過ぎに1本の竿から尋常ではない、鈴の音がこだました。さお先の蛍光目印も大きく前後に揺れている。

「来た、来た、来た!」そのタマンは、前触れもなく一気にエサを丸飲みし、イノシシのように沖向かって一直線に走った。名手、剛さんは両足を踏ん張り、体重を真後ろにのせ、強引にロッドをあおる。さらにリールのドラグを絞め、さらにあおる。すると、真っ暗な海のなかに、ヘッドライトに照らし出された青白い影が見えた。