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「津野山アマゴ」の伝統放流 (本誌P.29〜32)  文◎フィッシングカフェ
編集部


不入山(1336m)の東斜面に源を発し、四国西南地域を大きく蛇行しながら、落差のない流れとなって、四万十市下田で太平洋に注ぐ四万十川。その長大な流れを支えるのは、主な支流35本、支流総数318本にも及ぶ渓流だ。なかでも、源流域にランドロック(陸封)された原種アマゴはパーマークが少なく地元の研究者たちも注目する貴重な種。その貴重な渓流魚を甦らせるために活躍する、地元の釣り人、豊田庄二さんを訪ねた。

旧東津野村で県営のアマゴ養魚場がスタートしたのは昭和46年。岐阜県の長良川から稚魚を取り寄せて放流した。そのため、原種のアマゴと交配が進み、気が付くと豊田さんが幼少時代に釣っていたパーマークの大きなアマゴが姿を消してしまったという。

豊田さんが本格的に天然アマゴの生態について調査、繁殖を行うようになったのは、平成14年に「よみがえれ四万十源流の会」を立ち上げたときだ。会の活動は、植物や動物、自然環境などいろいろな面からアプローチし、初代会長は高知大学の石川教授にお願いした。そこで豊田さんは、四万十川の源流域の魅力をもっと知ってもらうために、かねてから興味のあった天然アマゴの調査を始めたという。

「調査活動の中で、放流種とは明らかに違うアマゴを発見したんです。普通のアマゴはマークが8から10個あります。しかし、その天然アマゴの新種であろうアマゴには、パーマークが5つしかない」と言う。

豊田さんが新種の天然アマゴを育て始めたのは5年前。親魚が10匹、稚魚が1000〜2000匹確保できれば何とかなる。3年後には安定するだろう。また、四万十川支流で同じような活動している個人の養殖師と連絡を取り合って、情報交換するなかで、「本格的な養殖場を一緒にやろう」という仲間が、何人か名乗りを上げてくれているという。

年齢を重ね、川のことも勉強してくる中で、やはり本来その土地に住んでいる生き物の大切さがわかるようになってきた。釣り人として、今後も天然アマゴの良さをアピールしていきたいと豊田さんは語る。