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野生色豊かな幻のヤマトイワナを幻で終わらせないために
(本誌P.5〜14) 文◎フィッシングカフェ
編集部


本州を代表とするイワナといえばニッコウイワナとヤマトイワナだが、ヤマトイワナはニッコウイワナにその生息域を奪われ、今や幻のイワナといっても過言ではないほど狭いエリアに押し込められている。

その幻のヤマトイワナを幻で終わらせず、釣り人たちに身近に釣ってもらうという木曽川漁協の取り組みを取材した。

木曽福島の水産試験場がヤマトイワナの養殖を始めたのは、約38年前。
もともとこの地域には、野生のヤマトイワナしか生息していなかった。

しかし、ニッコウイワナの方が人馴れするし、貪欲で喰いつきがいいとの理由から、放流が始まり、年々その魚影が少なくなっている。ヤマトイワナは一般に、東は富士川から西は琵琶湖の東側まで、太平洋側に流れる河川の上流に生息し、その最も中心は木曽川水系といわれている。紀伊半島にわずかに生息するキリクチとともに、かなり古くに陸封された種で木曽川周辺では「木曽イワナ」と呼ばれていたという。

木曽漁協は、こうした希少イワナであるヤマトイワナの純系を支流最上部へ放流し、在来ではないニッコウイワナとの棲み分けを進めている。しかし、ニッコウイワナにくらべ、ヤマトイワナの種として繁殖力の弱さや、森林伐採による山や森の疲弊、そしてあろうことか、禁猟区、禁猟期を定めても、希少性の高いヤマトイワナを求め、平気で山を越え根こそぎ魚を盗っていく密猟者の被害も甚大だという。

ヤマトイワナを守ることは、釣り人の過去に対する憧れと、将来の生きた渓流に対する希望でもある。手をこまねいていたら、ヤマトイワナは真っ先に消えてしまうであろう魚。北海道のイトウよりも先に絶滅してしまうかもしれない。そのためには漁協が先頭にたって目の前にある問題を解決しなくては、と最後に木曽漁協の組合長、北村昭雄さんは語ってくれた。