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荒れる海、食い渋る魚 真冬の石垣島は半端なく辛く、でも楽しい (本誌P.60〜64) 文◎遠藤 昇


 港をでた第八天幸丸は、南東の風を避けるため進路を西にとる。広いリーフに囲まれているとはいえ、八重山諸島の冬の海は不規則なうねりが前後左右から船体を翻弄する。
 探見丸の取材で正月明け早々に石垣島に向かった。高橋哲也氏もクマさんも大物の魚影を探見丸で見ようという試み。基本的にはムロアジやグルクンの生餌による泳がせ釣り。
 ラインは水深130m〜300mを狙うので、PE10号〜15号が最低400m。標準で500m〜600mのラインキャパ。ハリスは最低で60号以上。それに、スタンディング泳がせ専用の高性能グラスロッド、チェルマーレ。リールはドラグ性能が高く、操作性に優れたオシアジガー5000を使用し、仕掛けひとつ作るにも苦労する。
 しかし、初日のムロアジ捕獲までは完璧だった。サビキ釣りでムロアジを調達するわけだが、圧倒的な手返しスピードで、次々とムロアジを釣り上げる哲也さんに驚く。20センチ強のプリプリしたムロアジアジが生簀に放り込まれるのだが、その後が続かない。
 本命のカンパチがまったく食ってこない。探見丸を見ると、ムロアジかグルクンの下や背後に大きな魚影が映るものの、どうも活性が悪い。
第八天幸丸の井戸船長も荒海をものともせず、自分の経験から様々なポイントを攻めるのだが、一向に釣果があがらない。船長に言わせると、「サメも食わない最悪のコンディション」とのことだ。しかし、哲也氏もクマさんも少ないチャンスを逃すまいと、荒れる海をものともせず、じっと竿先をにらんでいる。
 さすがだなと思ったのは哲也氏の攻めの姿勢。そんな状態でもグルクンから錘をはずしてフカセ状態にし、ラインにテンションをかけたり緩めたりしながらグルクンを上手に底から中層、中層から底と操り地元ではアカジンと呼ばれるスジアラの3キロ弱の大物を釣り上げた。これには、さすがの船長も「哲也さんはさすが。旨い!」を連発していた。
 釣りをしていてつくづく思うのだが、条件の良い日はそれほど多くはないと思う。良いときの記憶は鮮明に残るから、悪い日が少ないように感じるが、最高と思える日は10回に1回、まぁまぁと思える日が3回に1回くらいだろう。後は努力と工夫と前向きな気持ちで、楽しんでいるのだ。哲也氏の姿を見て、さすがプロだなと思う反面、自分を信じて諦めない姿勢をおおいに学んだ旅だった。