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(本誌P.17〜18) |
写真・文◎大川 直
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特集「疑似餌の謎」で担当した、奄美大島に残るソーラヂチを使ったサワラ漁は、実に面白い漁法だった。
この漁法の存在を知ったのは10年ほど前になるだろうか? 常に頭の片隅にあった、興味の尽きない取材対象だったが、なかなか訪れる機会に恵まれなかった。念願叶って今回、その全体像をこの目で見ることができた。
島には3日間滞在した。サワラの模様が悪いため、あまり気乗りがしないという名人、用稲良久さんに無理を言い、沖へと出てもらって一連の動作を見せてもらった。名人の予想通り、サワラは姿を見せてくれなかったが、それでも、「ソーラヂチ」、「フクロ」と呼ばれる疑似餌の巧みな扱いには目を見張った。近年では獲れないときのほうがが多い、という。現実を踏まえれば、沖に出ることが出来ただけでも十分な収穫だった。
単独取材班?の機動性を生かして、予定した場所以外にも、グルグルと島内を走り回り、漁に関する情報を拾い集めた。
そのなかで一番に感じたことは、サワラ漁は島民にも忘れ去られつつある存在、ということだ。役場には伝統漁法として保存、伝承していこうという意識はある。だが、取材時では、それは島内で定着までは至っていなかった。とくに若年層は存在自体を知らない、というイメージだった。国内の漁師には受難の時代。今後、多くの漁法が消えていくだろう。時代の流れだ。ひとつでも多くの漁法の存在を伝えていく。これは自分にとってのテーマのひとつでもある。今回、誌面上で伝承の役割の一端を担えたとしたら、それは自分にとっても無上の喜びだ。 |
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