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田子倉湖通い30年の豪快ルアーマン (本誌P.17〜20) 写真◎津留崎 健
文◎木下卓至
奥会津・田子倉湖のルアーキャスティングに、30年以上も通っているという渡辺良雄さんの口から飛び出す話は、どれも冒険家顔負けの仰天話ばかり。国道が通行止めの時期、深雪を1時間以上ラッセルして歩いたり、それも面倒だとダムサイト横の急斜面を直登したり、雪の中を友人たちと何時間もかけてボートを担ぎ上げたり。笑いとともに語られる物語に、こちらはどんどん引き込まれていった。

そもそも渡辺さんの釣り人としてのキャリアが一風変わっている。  20代のころ身体をこわしてタクシー運転手をやめると、ほとんど釣りの経験がなかったにもかかわらず釣具店を開業。ところが、釣りエサの匂いが苦手だったそうで、流行の兆しが見られたルアー&フライショップへとリニューアルする。この新しい釣りを勉強しようと思い立つのだが、そのために選んだのが、つても何もないアラスカでのサーモンフィッシングと、もうのっけからスケールが違うのだ。

ルアーフィッシングにハマッてからは、山向こうの銀山湖で解禁当日に釣りをしたいがために仲間とヘリをチャーターしたり、カヌーで滝を落ち下ったりと、豪快なエピソードに事欠かない。失礼を承知で言わせてもらえば、まるで漫画のような半生を送ってきたように聞こえてしまう。

国内外を問わずルアーとフライの釣りのために飛び回っていた渡辺さんは、「ちょっと飽きちゃった」と、ショップを息子さんに譲ってしまう。いまは地元のリゾート施設の管理をしながら県の観光広報を手伝い、地域を盛り上げようと奔走する毎日だ。

その時々、好奇心の赴くままに人生を満喫してきたように見えるが、そんな渡辺さんが未だに成し遂げていない夢が、2尺イワナを釣り上げること。いまでも巨大イワナが棲む田子倉湖が、きっと渡辺さんの伝説に新しい1ページを加えてくれるに違いない。