父島で33年もの間、ポリネシアンカヌーによる一本釣り漁を営む桜井敏和さん。小笠原では、日本人がこの島に入植する以前からこのポリネシアンカヌーが伝統的に使われ、かつて父島では、ほとんどの漁師がこのタイプのカヌーで漁を営んでいた。しかし、現在、職業漁師として小笠原の海に出る方は、桜井さんをおいて他にはいない。
桜井さんの釣りは、基本的にはアカバ(アカハタ)などの根魚釣りだ。釣り上げた獲物は船中の生簀に入れ、活かしたまま持ち帰り、東京への出荷も活かしたまま送る。漁期は1年を通して行えるが、冬場は週に1回出られればいい。
小笠原に来た当初は、潜って伊勢エビ獲りやサンゴ漁もやった。漁と名のつくものはほとんど経験したという。その頃の経験があるから、ハタ類のことは良く知っている。ハタがいる場所は伊勢エビと同じ。潜っていたから水中でどこに潜んでいるかもわかっている。経験を元に編み出された漁法が、浅場で『ハコメガネ』を使って、水中を見ながら釣るというものだ。
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