Fishing Cafe

Fishing Cafe ProjectWorld Fishing ReportFishing SalonMagazineBSTVMaking of Fishing Cafe
Top of Making






出雲の神の目の前で繰り広げられたザ・インチクの恐るべき実力 (本誌P.23〜28) 文◎遠藤昇
写真◎津留崎健

「イ・ン・チ・ク」。この聴きなれない和製ルアーが釣り人の間で囁かれるようになったのは最近のことだ。見た目は鉄砲弾のような円錐形の鉛。底部にタコベイトとアシストフックを付け、底を探る。特別なルアーアクションも必要なく、底を取りゆっくりと巻き上げてくる。すると、確信的なガツンというアタリ。第一印象は「こんな簡単に釣っていいの?」というものだった。

今回、特集の取材でソルトルーアーの大家、佐々木洋三さんと出雲大社の日御崎沖でインチク・フィッシングの実釣を行った。早朝、わずか15フィートほどの漁船に乗り込む。佐々木さんは揺れを楽しむかのように、船首に立ちインチクをキャスト。すると、1投目からキジハタを釣り上げる。僕は房総・大原で徹底的に仕込まれた「ビシマ仕掛けカブラ針」にサルエビを付け、佐々木さんに負けまいと底を取る。佐々木さんは2投目でも巨大な本カサゴをゲット。その様子に期待をふくらませ、僕も負けじと仕掛けを握る人差し指に真剣を集中。佐々木さん3投目でもキジハタ、ゲット。仕掛けを引き上げ慌てて入れ替えるが、こちらのサルエビは食われた形跡もない。佐々木さんは4投目でも巨大なキジハタ。そこで舟を潮上に戻す。
ふた流し目。佐々木さんは先ほどよりインチクを遠くへキャスト。底に対してラインを斜めにして何度か底を取る。その数回の底取りの間に、またもやカサゴをゲット。

ビシマが船べりをこすりながら「カラカラカラ」と、気持ちよい音をたて海中に沈んでいく。底を取り人差し指に神経を集中して、アタリを待つ。10メートルほど引き上げ仕掛けを入れ替える。佐々木さん、次々にゲット。すでに10枚は超えている。そして一言「遠藤さん、このインチクを付けてみてください」。素直に従うと、底を取った瞬間に人差し指に「ググッ」と、アタリ。引き味を楽しみながらやっとの思いでキジハタをゲット。
その後も、インチク付きビシマ仕掛けで頑張るが、佐々木さん5に対して1の有様。そこで結論。インチクはその形状から底取りで根掛かりしづらい。ロッドとリールを使いキャストすることで、1投での底取りの回数を増やすことができる。それに対して、ビシマ仕掛けは船下のピンポイントでしか底を取れない、探れない。探ると底を引きずり、とんでもない根掛かりに泣く。インチクの仕組みを研究し、理にかなった佐々木さんの技。「インチク恐るべし。プロとはまさにこういうものか」と感じた取材だった。