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海をつくりなおす人 (本誌P.27〜30) 文・写真◎大川直
海をつくる。
全能の神でもないかぎり、考えもおよばない発想だ。しかし、われわれもその一端を担うことは出来る。そんなことを教えてくれたのが、今回、取材に協力してくれた工藤孝弘さんだ。神奈川県水産技術センターの栽培技術部に籍を置く工藤さんは、アマモ場の再生活動に力を注ぐ研究者だ。

アマモとは、簡単に言ってしまえば、海藻の一種。数種あるアマモ類によって構成される草原の総称がアマモ場だ。アマモ場は海底の生物や魚のすみかとなったり、漁場となったり、または、水質や底質の浄化の役割を担ったりと、近年ではその重要性から、保全や再生が注目されている。

工藤さんは自身にとっての身近な海、学生時代から通っていた金沢八景の海をベースに活動を展開している。いっときは壊滅状態とまでいるほど激減した金沢八景のアマモ場は、多くの方々の力で確実に再生への道に向かっている。釣り人であるわれわれも、自分のホームグラウンドの変化には敏感だろう。

愛着のある釣り場が荒廃していく様子を、安易に見逃してはいけない。ましてや、荒廃に加担することなどあってはならない。保全や再生に関する行動は、すぐに結果が出るものではない。だが、ひとつひとつは微力で実感に乏しいものであっても、長い年月を経て大きく実を結ぶことは出来る。工藤さんの活動は、そんな希望を多くの人に与えてくれるものだ。