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(本誌P.17〜18) |
文◎木下卓至
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特集ページの取材でメジナの生態についてうかがうために訪れたのは、紀伊半島の先端にある串本海中公園。小規模の水族館では珍しくないのかもしれないが、水族館で展示している魚のほとんどを、公園のスタッフが採取してきているのだという。支配人で学芸員でもある宇井晋介さん自らも、「あくまで採取です」と竿を片手に沖へ出るのだと笑っていたのが印象的だった。
宇井さんは、串本で生まれ幼少のころから釣りをしたり、潜ったりして、ここの海で遊んできた方。大学の水産学部を卒業後に串本海中公園に入ってからは、学芸員として串本の海を見続けてきた。ちょうど温帯域と熱帯域の境界である串本周辺は、海中生物がとても多様であり、海に関わる仕事をしていてもとても楽しいのだという。
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その宇井さんが心配しているのが、最近10年ほどで顕著になった海の変化だ。おそらく地球温暖化の影響だろう、海水温が上昇し、串本の海が熱帯化。魚の種類、サンゴの種類が明らかに変わってきており、沖縄周辺の海にどんどん近づいてきているという。
「海の近くに暮らしている人たちでも、海への関心が低くなってきている」という危機感もあり、宇井さんがいま力を入れているのが、海やそこに棲む生物のことを知ってもらう自然教育プログラム。自分がそうだったように、子供たちに海の面白さを伝えられれば、そこを入り口にして自然への興味が広がると期待している。釣りにしても、自然との接点。「多くの時間を海で過ごすのだから、釣果ばかりでなく、海の中のことにももっと興味を持って欲しい」と言った言葉が耳に残った。
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