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(本誌P.35〜38) |
文・写真◎大川直
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山形県の飛島で、『赤鯛』と呼ばれる大鯛が釣れることを知ったのは、つい最近のことだ。海を隔てた庄内地方は、釣りが武芸鍛錬の一貫として奨励されてきた地であり、釣りがひとつの文化として定着している地でもある。古来、この庄内地方の釣り師たちが、単なる大鯛と呼ばず畏敬の念をもって呼び慣わしてきたのが『赤鯛』という魚だ。
期待に胸を膨らませて渡った飛島は、観光を売りにしているわりには、何もない島だった。しかし、釣り人にとっては、魚がいればばいい。二泊三日の短い滞在だが、釣り三昧、漁三昧の濃い時間が待っている。それで十分だ。
釣れたのか?獲れたのか?
結果からいえば、磯からの釣りも延縄仕掛けでの漁も空振りに終わった。『赤鯛』の具体的な片鱗としては、定期船の発着所で見た魚拓だけだった。もとより、簡単に姿を拝むことができるとは思ってはいなかったので、落胆という気持ちはなかった。延縄漁が悪天候のため、満足に出来なかったことは心残りではあったが…。
昔も今も『赤鯛』と呼ばれる大鯛が飛島に泳いでいることは間違いない。ノベ竿である庄内竿で『赤鯛』を釣った時代は、魚は多かったが道具が及ばなかった。今は、道具は完璧だが、魚が少なくなった。いずれにしても、『赤鯛』を釣ることは難しい。釣り場環境の回復に務めるべきか、釣り道具を退化させるべきか? われわれ釣り人が選ぶ道は、言わずもがな、だろう。
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