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(本誌P.19〜24) |
文◎木下卓至
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特集の離島取材のために訪れた北海道・奥尻島。自分自身も含め多くの日本人がこの島の名前を知っているのは、1993年に起きた北海道南西沖地震での大災害による。地震の規模はマグニチュード7.8、震源に近い奥尻島では震度6と推定された。地殻変動による地割れや陥没、建物の倒壊、液状化現象に加え、最高で高さが29メートルにもなる大津波の来襲が、島に甚大な被害をもたらした。集落が丸ごと津波に飲み込まれ、壊滅状態にある地区を映した信じがたい映像は、いまだに奥尻島という名と一緒に記憶されている。
地震の1年後に復興のようすを取材するため島を訪れたときは、崩れ落ちた土砂が道路を塞ぎ、陥没して通行止めになったままの個所がいくつも残り、まだ災害の大きさを生々しく感じ取れる状態だった。あれから13年が過ぎ、久しぶりに訪れた島は、表面的には静かで穏やかな時間を取り戻しているように感じられた。
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宿泊した神威脇地区の民宿でそんな感想を伝えると、「このへんは津波で漁船を全部やられちまって、いまだに大きな船はないままなんだよ」と、おかみさん。そのためこの地区での沖釣りには、他港から遊漁船を回してもらっているという。島の人々それぞれの復興はまだ途上なのだ。その後、「海は透き通ってきれいだし、魚は釣れるし、天然のウニをたらふく食べられるし、こんなにいいところないべさ。本州からももっともっと釣りのお客さんがきてくれるように宣伝しといてもらわなきゃ」と、絶品のウニ丼をご馳走になりながら尻を叩かれてしまった。
奥尻島は美しい海に恵まれていることから「北の沖縄」とも呼ばれている。しかし、こんなキャッチコピーを使わずとも訪れた人を魅了するに十分な自然を抱えている。今回の特集で、せめて釣り人だけにでも奥尻島の魅力が伝わってくれるとうれしいのだが。
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