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(本誌P.31〜34) |
文◎大川直
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播州毛鉤の伝統工芸士、勝岡由起雄さんを西脇市の作業場に訪ねた。昭和20年代に建てられたゆかしき作業場。ご子息の貴広さんと二人、昼食の休憩をのぞき、1日8時間から10時間座りっぱなしで毛鉤を巻き続ける。会話はほとんどない。静寂のなかで1本、また1本と毛鉤が完成していく。
「ある程度の数が出来てないとね。そうですね、1日に70〜80本、しかも1年前、3年前に作ったものと同じように出来ないと一人前とは言えません。だいたい、6〜7年はかかるんじゃないですか?」
と由起雄さん。40年間、毎日のように毛鉤を巻き続けるという生活は単調とも言えるだろう。常に一定基準以上の品質をクリアするよう自分を律することは、仕事のキャリアを積めば積むほど難しくなる。ほかの誰も強制しないのならば、なおさらだ。
貴広さんに聞く。「由起雄さんは厳しいですか?」
「厳しいと思いますよ。でも、どこがいい、悪いと口に出しては言ってくれない。ただ、いい、悪いだけ。あとは見て覚えろ、自分で考えろ、という感じ。仕事を覚えるまでは、どうしていいか分からず、辛かったですよ」
自ら高い位置にハードルを置くことが出来るかどうか? これにより品質は決まってしまう。勝岡毛鉤はアユ釣り用毛鉤でトップのシェアを有する。価格は競合他社より若干高い。高価格、高品質のブランドを守りえたのは、日々ハードルを越えてきた結果だ。
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