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探し続けた幻の鉤との出会い (本誌P.39〜42) 文◎木下卓至
今号の特集が擬似餌・擬餌鉤と決まり、まずは企画のためのネタ集めから。全国を釣り歩き、撮り歩いているカメラマンの高野建三さんに電話をしてみると、こちらの説明からほとんど間を置かずに出るわ出るわ。サーモンフライの名タイヤーなら誰それ。ルアーを作っている面白い友だちがいる。そういえば、あの地方にも……。いくつかの候補の中から「一見すると地味なんだけど、けっこう面白いんだよ」と、クローズアップされたのが盛岡毛鉤だった。

せっかく岩手に行くのであれば、地元に明るく、釣りの腕も立つ方に取材をお願いしたいところ。で、これまた高野さんのネットワークの中から紹介していただいたのが、一関在住で『イーハトーブ釣り倶楽部』『山を上るイワナ』などの著作がある、作家の村田久氏だった。

実は、今回の取材で、村田さんが盛岡毛鉤以上に熱心だったのが、『打つ釣り』という聞きなれない釣り用の鉤。かなりローカル色が強いうえに、今ではほとんど行われていない釣りらしく、村田さん自身も使ったことがないという。まだ子供だった時分に、父親がやっているのを見た記憶があるだけで、その後、古い釣り師に尋ねてもほとんど収穫を得られなかった、いってみれば幻の釣り。

この打つ釣り用の鉤、ようやく探し当てた釣具店でも、見つかったのは45年ほど前に売られていたものの残り数袋だけ。長さ5〜6ミリほどの手作りされた精緻な鉤そのものがすでに製造されてなく、貴重なデッドストックとのことだ。ようやく出会えた幻の鉤を資料のためにうれしそうに持ち帰った村田さんだが、「もったいなくて使えない」と、複雑な心境であるようだ。