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(本誌P.31〜36) |
文◎齋藤海仁
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カタい地面を4つのタイヤで走る車と違って、カタチのない水面を走る船は実に手強い乗り物だ。
たとえば、遊漁船の変遷を探る記事ではさらりと流してしまった「船という乗り物は長さにもよるんです」というひと言。これには深いわけがある。船のスピードを決める要素として、非常に大きいのが水面からの抵抗。なかでもやっかいなのが造波抵抗というもの。これは船が走るとき、波を起こすのに消費される力である。
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造波抵抗を決める大きな要素が2つある。
ひとつは速度。たとえば、ゆっくり走る大型タンカーなどでは10%程度だが、高速艇では50%近くにもなる。
そして、もうひとつが船の長さだ。船が長いほど、造波抵抗は小さい。また、船の長さよりも造る波の波長が長くなると、急激に抵抗が増える性質があるため、実質的に最大船速は船の長さで決まってしまう。造波抵抗は難しい流体力学のなかでもとびきり難しいらしいので、詳細は省く(というより、よくわからない)けれど、ゆえに「船という乗り物は長さにもよる」となるわけ。
遊漁船に乗っていると、スピードが上がるにつれて船首がぐっと上に持ち上がるはず。あれは自分の船が造った波の抵抗を大きく受けている証拠。さらにスピードアップさせるには、プレーニングといって、モーターボートみたいに波の山に乗り上げて滑走させる必要がある。滑走型の走りはまた別の次元になるのだが、大型の遊漁船をプレーニングさせるには2000馬力くらいいるというからとうてい無理な話だろう。
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