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荒波にもまれ、強風に翻弄される小久保領子のカサゴ釣り
文◎遠藤昇
10月初旬、その日はフィリピン沖で発生した大型台風が中国地方で熱帯低気圧に変わり、関東北部から東北にかけて大雨をもたらした翌日だった。夜半まで吹いていた南西の風は、夜明け頃には北東の風に変わり、雲は高くまさに秋の空が広がっていた。下田・須崎港を出た船は湾外に出ると、進路を南にとり下田港の南西沖に浮かぶ神子元島(みこもとじま)を目指した。

今回は、この神子元島周りの根を中心に、沖釣り初心者の小久保領子さんに探見丸を使いカサゴなどの根魚五目に挑戦してもらった。しかし、神子元島の周囲は、まるで、滝つぼのすぐ脇に立っているような飛沫が上がっていた。船は止まっているというのに、強風が波頭を吹き飛ばし、空中を舞っている。防水のアウターウエアには雫が溜まり、無防備な顔に塩辛い海水が張り付くほど。晴天の空とは裏腹に北東の風は10メートルを超え、波の高さは4メートル。下田沖での釣行ではありがちな天気だが、前後左右に大きく傾く船上は沖釣り初心者にとっては、かなり厳しい条件だ。

小久保さんも、最初はそのうねりを楽しんでいるかのように、微笑みながら探見丸を操作していたが、次第に顔色が変わってくる。そして、何匹目かのカサゴを釣り上げたころには、「少し酔いました」と自ら船酔い申告。しかし、その後の頑張りは見事。潮が動きアタリが出はじめると、船酔いなどどこ吹く風、根掛りを恐れずがんがん攻めている。女性釣りライターを目指すだけあり、根性も座っているわけだ。

結果は2キロオーバーのカンコを頭にかなりの釣果。下船後、船宿で出された狸うどんをペロッと平らげるあたりは、なかなか立派。今後が大いに期待される彼女であった。