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(本誌P.35〜38) |
文◎遠藤昇
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お天と様が黄色くなってきたから、夏だね」と鮎釣り名人の吉村さん。
梅雨明け後の7月20日頃、球磨川での鮎シーズンが幕を開ける。川の中央付近の石が黒くなっている。それは梅雨の間に下っていた鮎が川を上り、藻を食んでいるということを教える印だ。川漁師はこれを“剥げてきた”と言い、鮎シーズンの到来を意味するという。取材時は、大水の後で水が濁っているのに石が黒くなっていた。これは釣れるということだ。
鮎釣りは、一番暑い日中を外した午前中と夕方6時頃までが良い。しかし、風が吹いてしまうとどうにもならなくなる。気温が一気に上がるのも駄目だ。“土用隠れ”といって、水温が上がると鮎が浮いてしまい、朝早くか夕方のちょっとの時間しか喰わなくなるし、人工鮎はいても天然鮎が上がってこない。ちょっとした自然の変化に敏感に反応するのだ。
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今年は大水が中途半端に出たのも条件を悪くした。土砂混じりの水やダムが空の時に溜め込んだ水はいつまでも泥水を流す。石に被った泥がやっと剥げて苔が付く時期にまた泥水が流れてきてしまう。カケ針の良いこの時期に10日以上泥が流れると、魚は痩せてしまい他の所へいってしまうという。
最近はゴイサギ、シラサギ、アオサギといった鳥が増えたが、一番困るのは川鵜が増えたこと。元々鵜など球磨川ではあまり見たことが無かった。鳥たちの主食である蛙やドジョウが農薬の影響からか田んぼなどから減り、河口付近の餌も減ったことで鮎の稚魚を食べに来てしまう。「漁師が減って鷺師が増えた」と笑う。
ここ2〜3年で釣り人も減った。それは鮎が減ったからだ。近年は放流方法が変わってしまったというが、吉村さんが放流の現場から離れたのはちょうど3年前。昔は一日に友釣りで100匹、200匹と釣れたこともあった。しかし、今は日本全国の川を見ても鮎は減ってしまっている。「川はどうしたのか? 自分は何をするべきなのか?」 球磨川水系の鮎釣り名人・吉村勝徳さんは、いつも漁に出ると、そのことばかり考えているという。
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