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(本誌P.31) |
文・写真◎大川直
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80歳を目前にした中林淳真氏は、国内のみならず世界を舞台に活躍する現役の国際的ギタリスト。前職は好きが高じての川魚職漁師。疎開先である茨城県の水郷地帯でマブナやヘラブナを釣るうちに、食糧難の時代も手伝って船を造り、家を建てるまでになった。
現在は岡山県在住。釣りは渓流のヤマメ、イワナ釣り、アユ釣り、そしてワカサギ釣り。マイボートで瀬戸内海の小物釣りにも繰り出す。最近では釣りは趣味ですか? と安易に聞いた私に、返ってきた答えは強い口調のノーだった。
「私にとって音楽と釣りはどちらも欠くことが出来ない道楽です。道楽というのは極まれば自分の命もお金もいらない、そういう世界だと思います。道楽、極道が自分の身を助けてくれた、ということは言えますね」
普段は柔和な微笑みを絶やさない、もの静かな紳士。だが、ひとたびギターを持ち指版を見つめる眼差し、そして釣り竿を手に穂先を見つめるその視線は、鋭い。
純粋に好きでやっていることには必ず天が応えてくれる、と氏は話す。年齢を重ねた今だからこそ、さらりと言ってのけるのだろう。若き日の、釣りに、そしてギターに打ち込む姿勢は周囲の目を惹きつけずにはいられぬ、鬼気迫るものであったのかも知れない。一瞬見せた眼光の鋭さは、そんな中林氏の往時を想像させるに十分な迫力を持っていた。
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