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デフォルメ作品の楽しみ方 (本誌P.37〜40) 文◎木下卓至
特集の取材でフィッシュ・デコイについて伺っていたとき、話の流れの中で、コレクターであり木工家の西岡忠司さんがデフォルメについて熱く語る場面があった。

西岡さんが作り出す魚や動物の木工作品も、全体に丸みを帯びていて、どこか漫画チックの愛らしい仕上がりのものがほとんど。そうした自分の作品への思いを伝えたい気持ちも手伝って、デフォルメについての語りにも力が入ってしまったのではないかという気がする。

素人目には、本物同様に細部まで作り込んだ作品ほど素晴らしく、デフォルメ作品はそれより低く映りがちだ。しかしながら、西岡さんはデフォルメを作家の手抜きと認めたうえでこう言った。「ただ本物に似せて作っても、なんの愛情もないし、意味もない」と。そして自分の作品については、「買った人やもらった人が、ホッとするものでありたい。自分の場合は、それをデフォルメすることで表現しているんです」と。

置いて眺めるだけの木彫ではなく、持って触って遊べる物にしたい。作品がみな丸みを帯びているのには、西岡さんからのそんなメッセージが込められている。帰り際、お土産にもらったドングリのコマは、それ以来、机の上に置きっぱなしになっている。原稿に行き詰まったときなど、ついついこれに手が伸びてしまう。