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取材の〆はキツ〜い一発! (本誌P.23〜28) 文◎歌野タケシ
北海道は何度出かけても飽きることがない。キザにいうなら男のロマンがある。それは風景であり、風であり、牧草の匂いであり、酒であり、酒の肴であり、食べ物であり、人によっては色白の北国美人だったりする。

釣り人であればそこに、60cm以上のニジマスであり、尺ヤマメであり、70cmを超えるアメマスであり、メーターオーバーの幻のイトウであり、セッパリ姿のカラフトマスであり、威風堂々のシロザケである、そうつけ加えなければならない。

取材を行なったのは標津町を流れる忠類川である。その日は天候に恵まれ、釣り人である横田博文さんの技術に救われ、じつに乏しい遡上状況だったにもかかわらず、無事アベレージサイズのカラフトマスと、まだ銀ピカのシロザケのメスを撮影することに成功した。



アイヌとサケにかかわる話を聞くために出かけた網走市の北方民族博物館はまさしく壮観だった。そこには、カナディアンエスキモーや北海道アイヌをはじめ、北太平洋沿岸に住んでいた多くの民族資料が現物として展示されている。ビーズや石、動物の骨を飾った手製の衣装を前にしばし見入ってしまう。

取材最終日の前日に宿泊したのは北見の町。シャワーを浴びてベッドにもぐり込むと、無事このサケ取材を終えた安堵感からか、その日はすぐに眠りにおちた。

翌朝僕を起こしたのは、何を隠そう笑顔が素敵な妙齢の北国美人なんてことはなくて、これまで体験したことのない強烈な揺れ、大地震だった。チクショー。

この日の出来事を書けばそれだけでページが尽きてしまう。端的なイメージを伝えれば、そんな日に限って11階に泊まっていた僕は、強烈な横揺れの破壊力でビルが6階あたりで折れてしまうと、即座に死の危険を感じたくらいだ。夕方、空港に向かう車の中で、この地震が「平成15年十勝沖地震」と名づけられたのをラジオのニュースで知った。

風景からシロザケまで、北の国のロマンを見たり感じたりするのは愉悦にほかならない。しかし、ロマンを求め、重いカメラバッグとロッドケースを両手に世界を取材する僕らは、けっこうツラいこともあるのだ。