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(本誌P.13〜20) |
文◎大川直
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特集「Islands in Ocean Current」では、与那国島とトカラ列島の宝島に出掛けた。100kgを超えるクロカワカジキの写真も撮れたし、確率の低さから魚体の写真は難しいだろうと想定していたショアからのGTの写真も手に入れることが出来た。万々歳の結果オーライではあったが、現地では結構苦労も多かった。一番悩まされたのは天候だ。とりわけ風。本格的な夏を迎える前に吹き荒れる南風。沖縄では夏至南風(カーチベイ、カーチバイと読む)と呼ばれるアレだ。与那国島では沖に出られず、宝島では磯に上がれず…。ロケ日の大半は民宿でゴロ寝という状況に追い込まれた。
釣りは自然相手。風や波は人間サイドではどうにもならない。釣りたいなら人間が自然の都合に合わせるしかない。そんなことは百も承知だけど、でもやっぱり。中年の域に片足を突っ込んだ男が目を潤ませて、「どうにかならんすか?」と船頭さんに懇願する。与那国島では波高4m、他の漁師の船は一隻も出漁していなかったし、宝島では身の危険を察知して早々に磯から撤収した。百戦錬磨のプロの判断を仰いだので、決して無理をしたわけではないけれど、それでもギリギリだったかも知れない。海を一瞥してゴロリ。「ここでは予定は立たないよ」といってすぐに寝息を立てた宝島の釣り人。あのおおらかさ。東京の人間にはなかなか身に付かない。
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