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ダイヤモンドも入れ食い状態。
この何ともアジア的な釣りよ (本誌P.35〜42) 文◎歌野タケシ
日本はやっぱりアジアなんだ。ぼんやりと、しかし明確にそう初めて感じたのは、西表島に取材に行く途中、石垣島の離島桟橋にたった時のこと。そこは飛行機の飛ばない小さな八重山諸島への玄関口で、数件のフェリー会社が就航している小さな港である。ディーゼル船に使う軽油やオイルの焼ける匂い。順光の光に照らされてまさしく真っ青にたゆたう海。フェリーの出発時刻を待っているのか、地元の人らしい風体のおばあやおじいたちが数人、日陰のベンチに腰掛けている。季節はおりしも盛夏に入る直前で、強烈な日差しがもたらすコントラストの強い光の中にあるその風景は、いつかどこかで見たアジアの海の風景そのもので、「ずいぶん南にきてしまったなあ」と静かに感動してしまった。

さて、今回の旅の目的である西表島での釣りのほうがどうだったかといえば、こっちのほうは取材開始3分でいささか拍子抜けしてしまった。飽きちゃったのである。

人為的なプレッシャーがないからなのか、それなりのポイントに適当なルアー(多少機能やピントがズレていてもかまわない)が入りさえすれば、過日は“南のダイアモンド”的憧れの的だったナンヨウチヌやミナミクロダイなどの魚が、親や子ども、果ては孫まで、オスメス、サイズをすべて問わずジャンジャン釣れたからである。釣りは面倒で難しいから面白い。パンダの絵柄のついた10ピースのパズルを何度も夢中になってやる大人はいないものだ。大人は酒を舐め舐め4000ピースのパズルを寡黙にやってこそ、それらしい。

アジアには、やはりアジア的生産率のもと、アジア的密度でうじゃうじゃ魚が生息している。そんな、バカバカしくもあたりまえのことを納得できた南の島への旅だった。