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(本誌P.17〜25) |
文◎遠藤昇
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5月3日、カメラマンの津留崎氏とともにサンフランシスコへ向かう。今回の取材は写真特集の巻頭を飾る重要な取材。日米のフィッシング写真家の対談である。サンフランシスコではバレンタイン・アトキンソン氏が待っており、空港到着後レンタカーをピックアップし眠い目をこすりながらバレンタイン氏のスタジオへ直行した。
バレンタイン氏のスタジオは古く洒落た2階建てアパート。玄関から事務所まで彼や彼の友人の釣り写真が飾ってあり、また、コーナーにはロッドやリールが無造作に置かれている。ちょっとした釣り博物館のような事務所だ。取材は津留崎氏、バレンタイン氏とも同じ目的を持つもの同士、終始和やかな対談が続いた。
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しかし、驚いたのは、フライキャスティングポンドというキャスティングの練習場でのことだ。津留崎氏もバレンタイン氏も恐ろしくキャスティングが上手い。池の中央にあるポイント、サイドのポイント、遠くのロングキャストポイントへピタリピタリと気持ち良くフライを落とす。ところが、最初は談笑しながら楽しんでいた2人も、対岸を目指してロングキャストを繰り返すなかで、いつしか真剣な表情に。バレンタイン氏が30ヤード飛ばすと、津留崎さんは35ヤードといったように、黙々とロングキャストを繰り返し、ラインはどんどん出てゆく。そうなると僕らは何もいえない。バレンタイン氏の彼女とベンチに腰を下ろし、ただただ子供のような2人の無邪気な遊びの終わりを待つばかりであつた。そしてそのキャスティング競争は日没まで続いてしまった。
この2人を見ていると、集中力と粘りがいい写真を押さえる原動力なのかもしれない、と感じた次第だ。
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