『完本・私の釣魚大全』が最初の開高版魚釣り本と聞くが『フィッシュ・オン』こそ、開高健の瑞々しい歓喜の声が聞こえる釣り本の処女作だ。
そして、話題になった『オーパ!!』から始まる一連の作品群は、総力戦が作り上げた流行作家のエンターテイメントであり、釣り仲間を待つ間、バーのカウンターでウィスキーを片手に読むにはいいが、風の吹き渡る午後の川原に寝そべり青空を眺めながら読むなら、やはり『フィッシュ・オン』だ。
開高健が逝って25年。
もう少し生きて、H・ウイリアムスンの『鮭サラの一生』のような物語を書いてほしかった。
取材・文◎宮城鮭介 写真◎狩野イサム
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