出雲大社の西に広がる大社の海。
そこは、一年を通して、さまざまな魚が釣り人たちを歓喜させる大舞台だ。
日本全国の八百万の神々が一同に集まる出雲大社・神迎えの神事と時を同じくして、
大きく成長した寒ブリが訪れ、大社の海はクライマックスを迎える。
冬の日本海の荒海のなか、地元の一本釣り漁師に混じった釣り人たちは、
自慢のジグを巧みに操り、寒ブリとの一対一の勝負に挑む。
また、鳥取県境港から中海を経て宍道湖奥まで遡上するスズキは、
日本建国神話のなかで最も波乱に富んだ、大国主命の国譲りにも
登場するほど古くから釣技が試され、今なお釣り人たちを虜にする。
そして、原始・古代の骨角器による巨大な釣り針や
弥生人の骨角器による日本最古のイカの疑似餌も発見されるなど、
この地は、日本海の沿岸漁労に大きな影響を与えた釣り文化が存在した。
今号では、出雲国の釣り・漁労を深く多角的に取材した。
写真◎狩野イサム Photographs by Isamu Kano
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