標高差1,000メートル、断崖絶壁のいろは坂を上りきると、
そこに鱒たちの別世界がある。
1878年、西欧魚類の放流および養殖が開始されて以来、
中禅寺湖、そして湯川は鱒釣り紳士の聖域となって、現在に至る。
トーマス・グラバーの温かいまなざし、そしてハンス・ハンターによる
「東京アングリング・エンド・カンツリー倶楽部」の無形の秩序は
深く紺碧に染まる湖水と、清らかなチョークストリームに支えられ、
今なお燦然とした輝きに包まれている。
大いなる野生、その野生が育む巨大な鱒。
そして羨望と熱意が交差する鱒釣り紳士の物語。
今回、本誌特集では、世界第一級の鱒釣り場である
中禅寺湖・湯川を通して、「鱒をめぐる九つの逸話」をレポートする。
写真◎芝田満之
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