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心地よく秘密めいたサケ・マスの研究
旧日光養魚場の過去と現在
(本誌P.33〜34)
語り◎辻 宏介
写真◎知来 要
取材協力◎水産総合研究センター
中央水産研究所 日光庁舎



明治23年(1890)に宮内庁のふ化場として開設されて以来、百年以上の歴史がある旧日光養魚場(現、中央水産研究所日光庁舎)。190mを超える水深といくつもの流入河川があり、自然環境に恵まれた中禅寺湖は巨大な天然の研究所でもあるという。

お話をお聞きした、中央水産研究所日光庁舎の辻さんのお話よると、かつて、施設内には、孵化・養殖のために国内外から数多くの鱒類などが持ち込まれた。種類はホワイトフィッシュ、エビ、サケ、マス、コイ、ナマズ、など。産地はソ連、北海道、琵琶湖など。ニジマスはカリフォルニアから、ヤマメは日光から運ばれてきたという。

1964年からは研究所に生まれ変わり、64年以降に手がけられた研究内容は多岐に渡る。近年の研究では酸性雨の影響がある。ちょっとの酸性雨が降っただけでも、魚の産卵・回帰行動に影響が出る。しかも、河川の水質が酸化すると、サケ・マス類が遡上しなくなる可能性がある。

また、釣り人に直結する研究では、『マス放流主流の体力増強』というテーマがある。自然にいる魚は川の中で常に泳いでいるが、養殖魚は流れのない、巨大なタンクのような環境で暮らしている。そのタンクの中に流れを起こし、自然の川に近い環境を作ったらどうなるか、という研究だ。その結果、実験魚のサクラマスは、流れがあったほうが大きく育つことが判明した。平均体長を比べると、生まれてから360日目で、流水だと24センチ、流れがないと20センチ。体重は、194グラム対102グラムと、2倍近い差が出た。流れがあった方が、体が太く、力強い魚が育つし、魚が元気なら、強い引きの釣りを楽しむこともできるわけだ。

いずれにしても、現、中央水産研究所日光支所では、中禅寺湖の非常に恵まれた自然環境で研究をできることで、研究者の探究心を刺激しているという。

 ネッシーやシーラカンスはいないだろうが、昔持ち込んで消えたと思っていた魚がある日突然発見される、など大きなサプライズが起きる可能性は非常に高いという。