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スローダウン。富士山の見える好ロケーションでとにかくワン・ショット。湖面は鏡面のように穏やかなのに同乗のカメラマン(ボート中央)はずっと憂うつそうな表情で押し黙ったまま。大きなマスクの上からさらにその手で鼻あたりを塞ぎ、「おっそろしいな、こわいなあ、ほら、あれ見てよ」とぶつぶつ告げる。顎で指し示す方向を眺めると、周囲の山々のスギ木立のあちこちに風に煽られてなにやら煙り立つ。「花粉ですわ、あれみんな、えげつないなあ」と恐怖におののくカメラマンの目に涙がこぼれていた。それでも決定的チャンスを逃さないよう臨戦態勢でスタンバイ。さすがプロです。

「もうちょい右、左、あと20センチ前へ、そうそう、そのまま」・・・名人丸橋さんの指示に微妙に操船しながら好ポイントへ。「初めにしてはうまいねえー、さすが。今日一日、ポイントを全部おしえちゃったらもう芦ノ湖のガイドやれちゃうよ、まあイメージからすると船頭かな」。そんな軽口を言っていると名人の竿にガツンと電流が走った。竿は震えて大きくしなる。「きた、きた、きたぞおー」と吠える名人に思わず「わあー、やったー」と立ち上がって拍手拍手。ぐいぐい引っ張るレインボートラウトが水面近くで身体をくねらせた。「タモ、タモー」と叫ぶ名人。初釣果はさて何センチ?

「デカイねえ、こいつは」。と名人がほんの少しカメラマンに話しかけた瞬間、竿にかかっていた緊張が突然解き放たれた。「あっ」みなが口走ったとたんに、全員の口から大きな溜め息がこぼれた。「バレちゃった、あーあ」。これくらいだったかな、と両手で逃した獲物のサイズを測る名人。昔から言うではないか、こういう場合の釣り師の両手は縛っておけ、とね。取材の一日、名人は芦ノ湖の湖岸を津々浦々、隅から隅までずずずいーとキャストし、リールを巻いたが、結局、女神は我らに微笑んではくれなかったが名人は時間のぎりぎりまで決して諦めない。感心するほどの執念?「執念じゃねーよ、釣れなかったらカッコーつかねーじゃねえか」と名人は苦笑いした。