細密な魚類図鑑として知られる『グラバー図譜』の正式名称は、『Fishes of Southern and Western Japan 日本西部及び南部魚類図譜』という。
江戸末期から明治期にかけて貿易商として活躍したトーマス・グラバーの息子、倉場富三郎が明治末から昭和初期の約25年間で編纂し、海産の魚類約800図、全32集から構成された、日本の魚類学会全体の礎となった貴重な魚類図鑑だ。
収録された魚類は、九州の天草灘、五島灘、玄界灘より釣り上げられたものが、一流の日本画家たちの手によって描かれ、美術品としての価値もさることながら、当時の九州北西部の魚類の状態を知る大きな手掛かりとなっている。
そこで、長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科の山口敦子教授から、この図譜が裏付ける、富三郎の功績を語ってもらった。