40年前、音楽的な才能が開花する同時期に傾倒した底物釣り。 そして、音楽家として第一線の活動のさなかに開眼した毛鉤釣り。 自分にとって、音楽と釣りの関係は、「習得を目指し、あるいは完璧を志す上で、多くの共通点がある」と高橋幸宏氏は語る。 電子音楽の先端を走る多くの作品。しかし、そのなかに見え隠れする牧歌的なエッセンスは、時には洋上に浮かぶ雲や渓流が発する光の粒のような印象を受ける。 2008年に発売された高橋氏がリーダーを務めるバンドpupa(ピューパ)の1stアルバム・タイトルは、『フローティング・ピューパ』。 「フローティング・ピューパ」とは、毛鉤の種類を言う。 うまく脱皮できないで流れていくカゲロウのサナギたちのことだ。 高橋氏の音楽的な活動の背景には、釣り人が好む暗号が潜んでいるようだ。 「釣りと音楽、釣りと人生」、高橋幸宏氏の知られざる側面についてうかがった。
取材・文◎遠藤 昇 写真◎足立 聡
|