● 日々是釣り日和 第一章 早春賦 『春まだき渓の容貌』 ●
少し雪景色が残るような肌寒い渓流に向かうと早春の吐息のようにゆっくりと、おぼろげに煙が立つ景色に出会うことがある。ああ、もう春が来たのだと感じるのはそんな時である。春の畑のあちらこちらで野焼きが始まると渓はようやく活気付いてくる。かじかんだ手を温めながら竿を繋ぎ、ラインをガイドに通す気分をなんと表現したら良いのだろう。
写真・文◎高野健三