Fishing Cafe

Fishing Cafe ProjectWorld Fishing ReportFishing SalonMagazineBSTVMaking of Fishing Cafe
Top of Making





フィッシング・カフェ紀行 in 山形

江戸時代、庄内藩主が武士の鍛錬として奨励したことに始まる庄内釣り。その釣りブームのなかで生まれたのが「庄内竿」だ。
武士たちはまるで刀のごとく釣り竿を大切に扱い、竿師の名竿を自慢した。1本の自然竹をそのまま用いた庄内、竿は、まさに工芸品。明治、大正、昭和、平成と時を経ても、その美しさとしなりの魅力は庄内の釣り人たちに愛され、継承されている。
しかし現在、庄内竿をつくる竿師は、本誌53ページで紹介した常盤さんの職人技を紹介しよう。


庄内竿の材料となる苦竹(にがたけ)は、庄内地方と秋田県の一部にしか生育しない珍しい竹。「1カ所の竹薮から5本採取できればいいほう」だとか。右から、採取したばかりの青い苦竹、5年間陰干ししたもの、飴色に仕上がった庄内竿。

竿づくりの最初に行うのが「貝殻どり」陰干しした竹のフシを取る作業だ。小刀でフシを削り、貝殻のように丸く、なめらかな形に仕上げてゆく。常盤さんは左利き。小刀は鍛冶屋さんで特注したものを使う。

次に、「火伸し(ひのし)」の作業。七輪の火に竹をかざしてくるくると回転されながらロウを塗る。竹の芯まで温もったところで、矯め木(ためぎ)という道具をあてて、曲がった竹を真っ直ぐに伸ばす。「ここが、いちばん神経を使う。真剣勝負」と常盤さん。

矯め木、小刀、やすりなど、庄内竿師の七つ道具。ズラリと並ぶ矯め木は常盤さん自らが作ったっもので、桜や楓など堅い木を用いる。

最後は、竹の中に釣り糸を通すための穴を開ける「中通し」という行程。手製の機会のハンドルを回しながら、ピアノ線をドリルにしてフシに穴を開けてゆく。竹の中が見えないだけに、気の抜けない作業だ。

いちおう完成したが、その後も数年おきに矯め直しを重ね、さたにしなりの良い美しい庄内竿に仕上げる。最終的な完成に5〜6年かかるそうだ。

仕事を終えてくつろがれる常盤さん。「何十年」やってても、竿が1本完成した時はホッとします」と笑顔。